問 137 麻酔したイヌの血圧測定実験に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 塩酸エピネフリンを静脈内注射すると、血圧

は一過性の上昇ののち、正常値より低くなるこ

とがある。この血圧の低下は、エピネフリンの

代謝産物がアドレナリンβ1受容体に作用する

ためである。

b 塩酸フェノキシベンザミンを前もって静脈内

注射したのち塩酸エピネフリンを静脈内注射す

ると、血圧は下降することがある。これはフェ

ノキシベンザミンがアドレナリンα1受容体と

不可逆的に結合したためである。

c 塩化アセチルコリンを静脈内注射すると、血圧は一過性に下降する。この現

象は、アセチルコリンが血管平滑筋のムスカリンM1受容体を刺激したためで

ある。

d 硫酸アトロピンを静脈内注射したのち大量の塩化アセチルコリンを静脈内注

射すると、血圧は上昇することがある。この反応は、アセチルコリンが自律神

経節と副腎髄質のアセチルコリンNn受容体を刺激したためである。

e 塩酸イソプレナリンを静脈内注射すると血圧は一過性に上昇する。この作用

は、イソプレナリンが心筋のアドレナリンβ1受容体を刺激したためである。

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解答

a× エピネフリンCOMT,MAOにより代謝されて、薬理活性を失う。エピネフリンの静脈投与によって、@皮膚、粘膜、内臓の小血管は収縮(α1作用)し、血圧上昇が起る。A骨格筋血管、冠状動脈は持続的に著明に拡張(β2作用)し、全末梢抵抗は低下し、血圧は下降する。この持続時間は上昇時間よりも長いので、上昇後に下降が見られる。また上昇の程度も、下降作用に相殺されるので押さえられる。

b○ フェノキシベンザミン非可逆的にα1,2受容体を遮断する。よってフェノキシベンザミンを投与後、エピネフリンを静脈内注射すると、エピネフリンのα作用が遮断されβ作用による血管拡張作用が現れる。よって血圧は下降する。

c× アセチルコリンを静脈内注射すると血圧は一過性に下降する。これはアセチルコリンが、血管内皮細胞のM3受容体に作用して、NOを産生して、NOが血管平滑筋に作用してcGMPを上昇して血管平滑筋を弛緩させることによる。血管平滑筋にはM1受容体はない。

d○ アトロピンムスカリン受容体遮断薬であるので、アトロピン投与後に大量のアセチルコリンを投与すると、ニコチン様作用(自律神経節の興奮、副腎髄質からのアドレナリン、NEの分泌)により血圧は上昇する。

e× イソプレナリンは,β1,2作用薬である。β1作用により心機能は著明に亢進し、心拍数・心収縮力が増大して、収縮期圧は上昇する。一方β2作用により骨格筋や内臓血管が収縮し、拡張期圧は低下する。その結果、平均血圧は低下する