管理人より・・・

 まず、こんなHPの端っこの隠しページまで見ていただいてありがとうございます。(ここの存在は公表してません)
 このHPで管理人をしております大学院生の岡田です。私が5回生の冬場に杉岡教授のヒョンな一言から作成を開始して、実務実習や卒業論文、定期試験の合間を縫ってちまちま作っていたため、世間に公開されるまで一年近く要してしまいました(汗)。
 本当はもっと実験を行っているところの写真も掲載したかったところですが、いかんせん動物実験がメインですので動物愛護団体との兼ね合いで、本編では割愛させていただいております。

 下記の文章は私が昔ゼミ紹介を担当したときに説明した内容を少し盛ったです。毎年4回生が担当してくれますが、もちろんプレゼンテーターによって微妙に言うことも違いますので、今年のバージョンは実際に訪問したときに質問してみて下さい。



                ――――杉岡研に配属を希望される学生さんへ――――
 

薬物動態に必要なのは、計算力よりもADMEを考え解釈すること


 皆さんは薬物動態学と言う科目にどの様なイメージを持っているでしょうか?
 3回生の時に一応「薬物動態の解析」という授業で一面だけでも学んできてくれたかと思いますが、そこではkelやAUCなどを算出する作業がメインでしたね。しかし、実際に臨床現場でCLtotなどを手計算で算出するでしょうか?もちろん答えは“No”です。臨床現場は驚く程忙しいことも多く、実際は腎機能の指標であるクレアチニンクリアランス (CCr) や患者さんの性別・年齢・体重などをパソコンに入力すれば1回の採血結果から血中濃度測定に基づく薬物治療モニタリング (TDM) は可能です。研究室レベルでも同様で、血中濃度を測定したら半減期などの薬物動態学的パラメーターは全てパソコンがやってくれます。
 要するに、式やその意味を知ることも重要ですが、実際の所臨床薬物動態学において、計算力の有無は関係が無いことがほとんどです。私も公式を5つだけ頭に入れてますが、研究室でこの知識を必要とした回数は数える程度しかありません。重要なのはパラメーターを算出するのではなく、その値を加工し、そこから想定される現象を解釈する事です。それではどうやって解釈するでしょうか?
※国家試験では普通に計算も出てきます。

 薬物動態学とは吸収 (Absorption) ・分布 (Distribution) ・代謝 (Metabolism) ・排泄 (Excretion) の4つの過程で、それぞれの頭文字を取ってADMEと呼ばれており、薬物動態学の根幹はこのADMEの事と言ってしまえるでしょう。
 例えば静注麻酔薬であるプロポフォールやベンゾジアゼピン系の医薬品は、血液脳関門 (BBB) のリン脂質膜を通過しなければならないため脂溶性が比較的高いです。物理化学で習ったFickの第1法則に従いますね。例えば私(165cm, 55kg)や某先生 (推定175cm, 100kg) は同じ成人男性ですから、一般的には同一投与量で薬物治療が行われます。しかし、はたしてこの二人に画一的な投与量で治療を行って大丈夫だろうかは問う必要もないですね。この二人のフィジカルデータを比較しただけでも分布容積 (Vd) も違いますし、脂溶性の高いお薬ですので、体脂肪の量 (脂溶性の高い薬は脂肪へ移行し易い)、血中のコレステロールの量 (高脂血症の人は薬が血中で親和性が高くなり目的組織へ移行し難い) などが違うことも想像に易いでしょう。他に血糖値が高かったら血中で薬が輸送されるためなどに結合しているアルブミンや赤血球といった血中蛋白が糖化される事で血中濃度が変化したり、腎機能や食生活・・・
と言うふうにADMEの"D”だけでも考えようと思えばいくらでも変動要因ってあるんですよね。これが臨床薬物動態学的考え方です。
 この様に研究室名である「臨床薬物動態学研究室」の“臨床”の2文字には非常に大きい意味があるんですね。

動態の知識は薬理と並んで臨床現場で求められる分野


 近年では特に病院でチーム医療が重要であると言われてきておりますが、薬剤師が最も必要とされるのは何か?となると、もちろん薬理学・薬剤学・薬物治療学の分野なんですね。こと薬理学・薬剤学を深く学ぶことのできる学部は薬学部だけなんですよ。他の医療関係者との間では専売特許となっている有機化学の知識もほとんど必要とされませんしね。まぁこの薬理学とともに重要とされている薬剤学。薬剤学を細分化したら製剤学・薬物動態学そしてそれらを融合した薬物送達学になります。この様に臨床現場で実際に必要とされる知識・技能の根幹を担っている事がわかっていただけたと思います。この薬物動態の知識を十分に発揮することで、治療の個別化であるテーラーメイド医療やオーダーメイド医療と言った、従来の病気中心の治療でなく患者さん個々に最適な治療方法の設計を行い有効性・安全性向上に寄与できるのは明白ですね。
 先ほどは脂質異常症などといった患者数の多い生活習慣病と薬との相互作用について述べましたが、この「病‐薬相互作用」は「薬‐薬相互作用」と比較したら驚くほど研究が進んでいないのが現状です。つまり、この「病‐薬相互作用」についての臨床で有用なエビデンスの輩出が強く求められています。当研究室では糖尿病・脂質異常症・中心静脈栄養 (TPN)・高酸化ストレス・うつ病などのモデル動物を用いて研究を行っております。

 少し長く成りましたがこれが私の感じた臨床薬物動態学の実態です。