歴史

コエンザイムCoQ10国際会議の沿革

 コエンザイムQに焦点を当てた最初の国際会議は、1960年にCiba Foundationの後援によってロンドンで開かれた“Quinones in Electron Transport”に関するシンポジウムではなかろうか。1957年、ウイスコンシン大学のFred Craneによって牛心筋ミトコンドリア呼吸鎖の電子伝達因子としてコエンザイムQ10が単離され、翌年、メルク研究所のKarl FolkersがNMRを駆使して化学構造を確定した直後である。そのときチェアマンを務めたDr. Folkersは、コエンザイムQ10の生体における重要性を認識して定期的な開催を強く期待したが、当時、コエンザイムQ10 は天然から抽出する以外に入手方法が無く、広範な研究を支えるに足る量の確保が困難で、残念ながら10年以上も開催の機運に至らなかった。

 1960年代末から70年代にかけて、日本の二社、日清製粉(日清ファルマ)、ついで鐘ヶ淵化学(カネカ)がそれぞれ独自の技術開発で商業生産に成功し、また、阪大の山村雄一(後の阪大総長)ら日本の臨床医の世界に先駆けた臨床研究により心筋代謝改善剤としての有効性が証明され、エーザイから医薬品として発売されるに至ってコエンザイムQ10の研究は大きく前進するようになった。

 Dr. Folkersが念願とした"Biomedical and Clinical Aspects of Coenzyme Q"に関する最初の国際シンポジウムは、内藤記念財団の支援で漸く1976年に富士山麓の山中湖畔で開かれた。Dr. Folkers、山村博士の共同チェアマンの下に当時の一線のコエンザイムQ研究者、F. Crane、L. Ernster、P. B. Garland、D. J. Morre、 H. Rudney、T. Ramasarma、T. Yamagamiらが一堂に会し活気に満ちたものであった。テキサス大学に移ったDr. Folkersの研究所から帰国したばかりの私もまた参加の機会を得た。

 この国際シンポジウムをきっかけに始められた「Biomedical and Clinical Aspects of Coenzyme Q10」に関する、一連の国際会議の開催地と年次を末尾に示したが、その後ほぼ2年毎に世界各地で開催してきている。1997年に永続的かつ着実な研究の推進と発展を願って、関係者のF. Beal、F. Crane、L. Ernster、T. Kishi、P. Langsjoen、G. Lenaz、G. P. Littarru、S. A. Mortensen、T. Nakamura、E. Niki、Y. Oka及びY. Yamamotoがエーザイ、カネカ、日清ファルマ、Pharma Nordの4社の支援を得て非営利団体の国際コエンザイムQ10協会(本部:イタリア)を結成して開催母体となり、1998年から現在の呼称で開かれるようになった。(現在の協賛団体等は別項を参照)

 「国際コエンザイムQ10カンファレンス」が日本で開かれるのは実に22年ぶりである。開催年の2007年は丁度コエンザイムQ10発見50周年、また協会結成10周年の節目に当たる。コエンザイムQ10研究に大きく貢献してきた日本にとって誠に喜ばしいことで、開催地神戸の組織委員会は、広範な研究活動の交流と共に、発見者Dr. Crane夫妻を迎え、その功績を盛大に祝いたいと企画している。多くの方々の参加を心からお待ちしている。

紀氏 健雄(Takeo Kishi)
神戸学院大学薬学部内
第5回国際コエンザイムQ10カンファレンス組織委員会

第5回国際コエンザイムQ10カンファレンス

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