臨床薬物動態学とは?

  近年、個人の遺伝子の差異に着目して投薬、治療を行う「テーラーメイド医療」がいわれていますが、それは一般的に個人差である「個体間変動」を指すもので、一人の患者の状態による相異を示す「個体内変動」ではありません。つまり、実際に薬物治療を受ける患者には、合併症の有無や、肝・腎機能の状態、年齢などさまざまな違いがあるのが普通です。こうしたことを踏まえながら、特定の患者の『その時その時の病態』を考慮しながら投薬、治療を行うことこそが、真のテーラーメイド医療です。
  薬同士の「飲み合わせ」があるように、病気と薬にも相性があります。しかし、病気と薬のすべての組み合わせを事前調査することは困難です。患者のどういった状態が薬物治療に影響するのかを検討する必要があり、病態と薬物治療の多様性を考えると、こうした研究はいまだ発展途上と言わざるを得ません。しかし、当然ながら、製薬企業も市販後調査をしていますが、患者に直接薬をお渡しする私たち薬剤師も事後のフォローをする責任があり、病気と薬の相互作用を一つひとつ精査し、目の前の患者に最も適した薬物療法を提供することが、本来あるべき姿です。
  薬物同士の相互作用については、そのメカニズムや臨床的意義が幅広く議論、検討が繰り返され、臨床結果として構築されています。一方、「薬物と病態の相互作用」も同様に、発生メカニズムを薬物動態学的相互作用と薬理力学的相互作用に分類することが可能と考えます。我々の研究室では、薬物動態学的、つまりある種の病態時における薬物の吸収・分布・代謝・排泄に焦点を当てて研究を重ねております。
  例えば脂質代謝異常では、脂溶性の高い薬物は循環血中において血中リポタンパクと結合し、血中濃度が著しく増大する。糖尿病病態下では、アルブミンの糖化変性により血中蛋白結合率が変化する薬物とほとんど変化を受けない薬物がある――などです。こうした「薬物と病態の相互作用」における薬物動態の変動様式は、一定の傾向はあるものの、薬物の物理化学的特性(分配係数、酸塩基性など)と薬物動態学的特性(蛋白結合率、代謝・排泄経路など)に大きく依存することが分かってきました。現在は、薬物と病態の相互作用に関与する生理的因子(血中脂質濃度、糖化アルブミン値など)と薬物特性を一つひとつ精査し、基礎情報を収集している段階です。将来的には生理学的パラメータを含む生理学的薬物動態モデルに薬物特性を組み込んだモデルが構築できれば、医薬品開発にも大いに貢献できると考えています。

研究期間・スケジュール

○4回生: 4〜10月・後期試験終了後〜春休みまで
○5回生: 実務実習期間外(夏、冬、春休みを除く)
○6回生: 〜卒業論文提出まで(9月中)

原則として上記期間の平日10:00〜17:00 (授業や実習で17:00を超える場合は原則〜18:00まで)。
英語論文のセミナー発表会、簡単な研究経過報告会は毎週予定しています。
その他歓送迎会や教室旅行、各種飲み会、誕生日会等は学生主体で随時開催しております。
2013年度の年間行事記録は遊んでばかりですが「 行事記録」 のページを参考にしてください。

※前期試験前は7月から、CBT・OSCE前は11月から、また、中間試験1週間前から原則として試験勉強に当ててもらって構いません。

研究内容の紹介

現在、本研究室では大学病院、他大学薬学部との共同研究を含む研究プロジェクトが進行中です。

その一部を「研究内容」の欄に記載しております。

  具体的には臨床データ全般の解釈とその統計解析、実験としての動物を用いた薬物の吸収・分布・代謝・排泄実験、代謝酵素や薬物の輸送に関わるタンパクの解析です。 また、薬物動態学に関する文献調査・輪読に加え、臨床薬物動態の評価、生物統計など薬物動態研究者、臨床薬剤師に必要なスキルの習得を目指します。
  また、現在行われているチーム医療において、薬剤師は適切な薬剤の選択と投与量の推奨を行う能力を求められていますが、単なる情報の受け売りではなく、エビデンスとなる文献の評価も含め、論理的な説明が出来なければ医師は納得しません。そのための臨床統計の知識は必須です。薬物治療のための価値のある、薬剤師による臨床研究は驚くほど少ないのが現状です、これらは生物統計の知識なくしては行えません。

当研究室では、原則として演習コースは設けておりません。基礎研究は動物を使った実験を伴い、専門的な 薬物動態・薬物速度論的解析を行います。 臨床研究は主としてカルテ調査等の臨床データ収集と、その臨床 統計解析・薬物動態解析です。実際にデータ収集には関連病院等への派遣を伴うことがあります。また、実際の患 者さんの体液中薬物濃度測定も行うことがあります
以上、希望と適性を考慮してテーマを決定します。

福島恵造先生より

  子どものころから生命科学に興味があり、研究職が天職と信じて大学院へ進学しました。しかし、「臨床現場を知らずして臨床に還元できる研究ができるのか」と思い、臨床薬学科修士課程へ進学し大学病院の薬剤部に籍を置かせていただきました。まず初めに臨床現場で痛感したのは、自分の無力さでした。薬剤師免許を取得し一人前の薬剤師のつもりでしたが、目の前の患者に対し何もできない。臨床現場で薬剤師として、研究者として、ここで自分は何ができるのか。右も左も分らぬ臨床現場で自問自答することが、本当の意味でのスタートラインでした。

福島恵造

  薬学部生の卒業後の進路は、病院、薬局、製薬企業、公務員など多岐に渡ります。たとえどんな職業に就こうとも、必ず知らないこと、分らないこと、できないことがあります。「在学中に学んでほしい事は、問題解決能力です。何が原因なのか。次にどうすれば良いのか。試行、評価・考察、情報収集・立案、再試行。Try & Errorですが正しく失敗すること。起き上がる時には、何かを拾って立ち上がること。これは研究活動そのものです。将来、直接研究活動に従事しない学生も多いと思いますが、研究活動を通じて得たことは必ず社会でも活かすことができます」